木造建築は奥が深いです。

こんにちは、事業部統括の鈴木です。

先日、東京オフィスへ行った際の帰り道、
見るとはなしに通りすがりの古本屋に視線を向けた処、この本が目に止まりました。

「住宅の設計・構造・設備」 工学博士  谷口 忠著

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写真の通り至って普通の上製本ですが、私の目を引いたのが「住宅」という単語と装丁の「色」です。
当日は厳しかった残暑も落ち着き始め、爽やかな秋風が吹き始めたとても天気の良い日で、
「読書の秋だろ“これだこれ!”」と通りすがりの風が言ったか、秋晴れのお天道様が言ったか判りませぬが、
いろいろ混ざり合って目を引いたという本です。

元々、古本屋の店先に並んでいる本は少し前の色あせた雑誌かカバーが無い文庫本が多く
(これは私のかなり偏った“偏見”と思って下さい)、こういう色の本が珍しく見えたのかもしれません。

よくこの手の本の題名には「建築」という言葉が使われるのですが、何故か著者は「住宅」と題しています。
ここも気を引くポイントになったのだと思います。
多分「建築」だったら視界にも入らず手にも取らなかったでしょう。
(この本の著書は建築(構造の方です)ではかなり偉い先生の様です。どちらかというと「住宅」より「建築」が
 ご専門と見受けられますが、何か意味がありこの本を出されたのだと思います)

と、いう事でいつ頃の本なのかを確認したところ、
DSCN7923
写真ではわかり辛いと思います、初版が昭和24年で昭和26年6版と書いてありました。
私が想像していたのは昭和40年代あたりの本と思っていたので、
ここでも「ん!」という気を引くポイントが1ポイントUPしました。

パラパラとページをめくってみると “旧仮名遣い” “旧字体” でしたので、
もうこの段階で殆ど “この本買い!” のゴーサインは出ていました。
因みに旧仮名遣いとは、“そうでないと困る” が “さうでないと困る” や、“つかう” が “つかふ” ってやつで、
旧字体は “図” が “圖” だったり “形” が “狀” 、“学” が “學” と書いてあります。

古本屋で買い物をする訳ですから年代が新しいのはいけません。
古ければ古い程、購入ポイントUPとなります。
お値段も「¥800」と、私の古本屋購入価格範囲をクリアーしていたので、
そのまま店の奥にいる店主の所へ持って行き購入しました。

これが目に止まってから購入迄の所要時間約5分とう即決購入でした。
未だゆっくりと読んではいないのですが今から約70年前に書かれている「木造住宅」に関しての基本的構造や
各名称等が現在と殆ど変っていないと云う事に、当たり前なのでしょうがいちいち感心してしまいます。

まあ一番最初に気になって開いたページは 「屋根」と 「外壁」(この本では「壁面仕上」)の項でしたけどね。
只、現在屋根・壁で使われている主流商品であるカラ―べストやサイディングという単語はかけらも出てきません
けれど、「アスファルトルーフィング」「マンサードルーフ」 「アートコート仕上」等、今でも普通に使っている
語句も使われているのは出版された時代を考えると感慨深い物があります。

「序」の所で著者が書いているのですが、
「この書は住宅の設計、構造、設備方面について、建築學的には最も普通のものを採り上げたのに過ぎないが、
現在は資材の關係で、この普通のものでも實現できないのは殘念である。
しかし今日のような狀態は特別な場合のことで、それを標準に考えることはおもしろくない。」

いかにも学者先生らしいというか研究者らしい言いまわしですが、これも時代背景を考えれば、
なるほどなと考えさせられます。
又、この本自体の内容が内容なので各項目にて図での説明が多くされていますので、
お面白かったのを数枚ご紹介します。

「普通の居間」の挿絵(戦後4年目ですよ)/「炊事臺と加熱臺の組合せ」(さすが昭和、木蓋のお釜 です)
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何気無く買った「住宅」の本でしたがいろいろ楽しませてくれる良い本でした。
古本屋が何処にでも有るというものでも有りませんが、機会があったら皆さんも是非のぞいてみて下さい。
思いもかけない面白い本にめぐり合うかも知れませんよ。

事業部統括  鈴木でした

◆最後にこの本の著者が関わった建物の写真です。
 1934建造 東京工業大学本館 登録文化財

IMG_5996

(橘節男、二見秀雄、谷口忠ら設計デザイン、時計塔のデザイン谷口吉郎)

近頃は耐震能力がないって理由で、昔の建築がどんどん壊されていくが、
この本館建築の耐震設計は、二見・谷口両建築構造学の大先生がそれぞれ設計をし、
両方を足して合わせた無茶苦茶たくさんの鉄筋量なので、絶対に地震で倒れないという話を聞いたことがある。
(伊達美徳」さんのブログから引用させて頂きました)

事業部統括 鈴木

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